アルガンオイルは、アルガンノキの種子から取れるオイルです。成分名はアルガニアスピノサ核油。

アルガンノキ、学名アルガニアスピノサ（Argania spinosa）は英語でArgan Treeとも呼ばれ、モロッコの南西部を中心に、アルジェリアやモーリタニア、西サハラといったアフリカ北西部の乾燥地帯に自生するアカテツ科アルガンノキ属の常緑樹です。

10mほどの高さになるアルガンノキの枝にはトゲがあり、幅が狭い卵型の葉っぱがついています。春に小さな黄緑色の花を咲かせ、3cmほどの実がなります。分厚い果皮と柔らかい果肉の中には種があって、アルガンオイルを豊富に含む種子は種の固い殻で覆われています。

アルガンノキの実が熟すまでには1年かかり、収穫できるのは翌年の初夏頃。アルガンノキはトゲで覆われているので、木から直接収穫するのはとても大変です。熟して地面に落ちた実を皆で拾い集めます。1Lのアルガンオイルを作るには、30～50kgのアルガンノキの実が必要になるのだとか。

天日干しした後、実の部分を取り除き、種の殻を割って種子を取り出します。種子を加熱して、ペースト状に粉砕した後、圧搾してアルガンオイルを抽出します。

アルガンオイルの抽出方法には、低温圧搾法と高温圧搾法があります。製造工程で高温の熱を加えない低温圧搾法は、コールドプレス製法とも呼ばれ、天然成分が熱によってダメージを受けるのを抑える製法です。

スキンケアやヘアケアに人気上昇中のアルガンオイル。アルガンオイルは酸化防止成分であるビタミンEが豊富でその含有量はオリーブオイルの2～3倍！ 保湿成分であるオレイン酸やリノール酸は全体の約50％も含まれています。

オレイン酸やリノール酸は角質層の細胞間脂質を形成する一部のため、これを補ってあげることで肌や髪の保湿、うるおいキープ効果が期待できます。

また、美容成分であるビタミンAも豊富に含まれているため、年齢に応じたエイジングケアにも有用性があります。

アルガンノキは別名 「生命の木（Tree of Life）」 とも呼ばれ、何世紀にも渡り北アフリカの先住民ベルベル人によって、スキンケア、ヘアケア、ネイルケアといった美容だけでなく、様々な用途に用いられてきたのだそうです。

日本でも食用のアルガンオイルが売られているので、お馴染みの方もいらっしゃるかと思いますが、濃厚なナッツ風味のアルガンオイルはモロッコ料理にも使われます。フライやサラダ、クスクス等、ベルベル人に食されてきました。でも、とても高価。

乾燥した大地にたくましく張られたアルガンノキの根は、土壌の浸食や砂漠化を防いでくれます。樹間で家畜を飼育したり、農作物を栽培したりするのにも有効で、木陰も提供してくれます。果実や葉は羊やヤギ、ラクダといった家畜の餌として、木や枝は木材や燃料としても活用されてきました。

他にも、ベルベル人の民間療法として古くは皮膚や関節リウマチ、心臓病等に用いられたりもしたのだとか。アルガンノキは古来からベルベル人の生活になくてはならない、生命の木なんですね。

アルガンオイルの価格が高い理由のひとつは、その希少性です。アルガンノキの実1つからとれるアルガンオイルはごく少量。しかしながら、アルガンノキの自生エリアは、年々減少傾向にあります。

現在、西モロッコのアガディール（Agadir）近郊のオーガネレー（Arganeraie）では、2,500ヘクタールを超える広大な土地がユネスコエコパーク（生物圏保存地域）に登録され、アルガンノキの持続可能な利用と保護の取り組みが進められています。希少価値に加えて、生産者であるベルベル人の女性達の経済的な支援、フェアトレードの観点からも、アルガンオイルの価格は維持されています。

豊富な美容成分から、「奇跡（miracle)」や「黄金（golden）」の実とも称されるアルガンオイル。干ばつに耐え、1年かけて実らせた実を収穫して、手間暇かけて製造されるアルガンオイルはまさに魔法の一滴！ 希少なアルガンオイル。大切に使いたいですね。

ところで、冒頭でお伝えしたN山式アルガンオイルの凝固点の測定ですが、残念ながら今の僕の力（腕力）では固まりませんでした…。アルガンオイルについてわからないこと、まだまだいっぱいあるな～（苦笑）。

【Author】 N山
YOF beautyの新人技術担当としてコスメの開発に携わる。先輩からの「仰せ」!? にたまに翻弄されながらも、自己研鑽に励み、日々成長中！